辻野あかりは冬を越えられるか
「辻野あかりは白雪姫をモチーフとしているのではないか」という話を以前見かけた事がある。
ナゴヤドーム公演にておよそ4年ぶりの追加となる7人の新アイドルシルエットが公開されたが、それぞれが何かしらの童話をモチーフにしており、辻野あかりは白雪姫なのではないか、という事らしい。童話モチーフの部分は正解かもしれないが、私は「辻野あかりは白雪姫ではない」と考えている。
私から見た彼女は『マッチ売りの少女』だ。
『マッチ売りの少女』は
大晦日の夜に少女がマッチを売っていた。売り切らなければ父親に叱られるため帰れないが、街の人々は忙しなく誰も買ってくれない。やがて夜も更けマッチで暖を取ろうとするが、マッチの炎で様々な幻影を見る。そして……
というのが大まかな流れである。一見語尾に「~んご」なんてつけたりりんごの精なる謎キャラクターを作り出したりする変な奴とは似ても似つかないが、類似する点がいくつかある。
まず「山形出身のりんごアイドル」というキャラクターだが、一般的に山形名産フルーツと言うと佐藤錦に代表されるさくらんぼが浮かぶだろう。山形産のりんごも全国3位の生産量と言えば聞こえはいいが、2位の静岡県は山形の3倍、1位の青森県に至っては9倍弱の生産量を誇っているのが事実だ(下記参考)。すなわち、マイナーな名産品を己のキャラクターに盛り込んでいるのだ。
次に(そしてようやく)、辻野あかり自身に関して。
彼女自身のエピソードは(デレステおよびぷちデレラ未実装なのもあって)群馬エリア制覇で手に入るRとエリアボス台詞しか伺えないが、その中にも引っかかる点がある。
「まずは、レッスン受けろってお母ちゃんが。反対されなかったんご!」
「父ちゃんもお母ちゃんも、アイドルやれって…なので、いったんアイドル続けてもいいですか!? あは♪あかり、アイドルになるんご!」
「親が山形りんごのアピールをしてって…アイドルでそれはアリですか!?」
「山形はりんご界で3番手で…青森に勝つためだって、父ちゃんが」
RおよびR+台詞より。我が子可愛さというよりは娘を山形りんごの宣伝材料とするようなニュアンスを感じる。実際エリアボス台詞でも
「ちなみにりんご1個分に含まれるビタミンCは…りんご1個分だよ!」
「それじゃラスト!私に勝っても負けても、覚えて帰ってほしいことがあるから、ちゃんと聞いてね!」
「りんごを選ぶときは…山形産りんごを選んでね!あかりんごこと辻野あかりでした!」
という風に、自分自身のアピールではなく山形りんごのアピールを行っている。辻野あかり自身の実家もりんご農家なことを踏まえると正しく『マッチ売りの少女』ではないだろうか。
シンデレラガールズは総選挙然りPaletteのコミュ然りシリーズの中でも競争社会色が強いアイマスだと思う。その中で生み出された1位になれないりんご農家の娘でありマッチ売りの少女である辻野あかりは、それ以前の追加アイドルとは違い「挑戦者」であるだけでなく最初から「敗者」でもあるという異色のアイドルだ。そんな彼女は這い上がり冬を越えアイドルとして輝けるのだろうか。それは、彼女と我々プロデューサー次
第だろう。
最後に、アイドルとして一歩を踏み出し始めた彼女の一言で締めたいと思う。
八宮めぐるは恋を知る
今年の夏はずっとシャニマスにのめり込んでいた。
恋鐘と子守唄、咲耶の過去、プロテイン焼きそば等々……この二ヶ月で様々な色濃いエピソードを拝見できたと思う。
その中でも特に気に入っているのが【夏に恋するピチカート!】八宮めぐるのエピソードだ。
今回はこの、じわりじわりと私の心を掌握していっためぐるの話をここに残しておこうと思う。
※以下、【夏に恋するピチカート!】八宮めぐるのTrue End含むネタバレがございますので、ご注意ください。
めぐるのエピソードはプロデューサーと撮影用の水着を買いに行くところから始まる。
色とりどりの水着に目移りする中、大人っぽい水着を見て次のようなやりとりがある。
「そうだな。案外あっという間かもしれないぞ?」
「うんっ! あっという間だよー?」
プロポーションこそ既に大人顔負けだが、八宮めぐるはまだ自他共に認める子供なのである。
この子供具合を良く表しているのが、めぐるにとっての恋だ。
学校ではよく告白されるらしいめぐるだが、本人はまだ恋愛と言うものが分からない。
プロデューサーがどんな気持ちか教えてみても、
「へー……恋って素敵なことなんだ……」
とどこか他人事の様。
恋を知りたい動機がもっと上手に踊るためというくらいだ。
「でも、それのどこから恋になるんだろう……」
「わたしの大好きの先にあるのかな。それとも全然違うところにあるのかな……」
「いつか誰かにキュンってしたら」
「プロデューサーにはちゃんと報告しなきゃだね!」
まだまだ子供で、まだまだ恋を知らない。
そんなめぐるの成長が、このエピソードのテーマである。
めぐるのエピソード内で、プロデューサーがうたた寝してしまう場面が2つある。
1つは、水着撮影の休憩時間。
もう1つは、仕事を済ませた帰り際。
どちらもめぐるに起こして貰うのだが、
前者では冷たいジュースを当てて驚かす姿やプールで遊び水しぶきをあげる姿
後者では眠気覚ましのコーヒーを淹れてくれる姿や頑張るプロデューサーのために私も頑張る、心配させないようにすると気遣う姿
と、明確な対比になっている。
プロデューサーと選んだめぐるらしい水着を着て、自分の好きな味のジュースを届け、プールではしゃぐ姿に対し、「大人の飲み物」の代名詞でもあるコーヒーを淹れ、砂糖とミルクでプロデューサー好みに味付けし、普段とはまた違った思いやりを見せる姿。
ちょっと大人になっためぐるがはっきりと見えるのだ。
めぐるの成長は恋を知る事にもつながる。
「どうしたんだ急に」
「えへへっ、言いたかっただけだよー!」
めぐるにとって「大好き」はなんでもない普通の言葉だ。
友達にも、先生にも、誰にでも分け隔てなく使う言葉だ。
しかしここでの「大好き」はまた違ったものだろう。
めぐると恋の話で出てきた
「いつか誰かにキュンってしたら」
「プロデューサーにはちゃんと報告しなきゃだね!」
という言葉、そして星空の下で語られる次の言葉
「お仕事やレッスンもそうだけど、こういうなんでもない日も沢山覚えておきたいの」
めぐるの恋は「大好き」の先でも別の所でもなく、なんでもない大好きの中にあったのだと思う。
とっ散らかっているが以上、めぐるのエピソードについての書き殴り。